
「吃音」は自分一人だけで解決できるものと抱え込んでいませんか?
吃音は隠そうとすればするほど、話す場面から回避しよう(逃げよう)と考えてしまいがちです。すると、周囲からは余計に軽蔑の目を向けられてしまいます。せっかくの吃音を克服できる機会を逃していることに繋がってしまいます。
100人に1人の割合でいる吃音者。しかし、なかなか同じ境遇の人を見つけらない。皆「吃音=悪いこと」と同じ思いで吃音を隠そうと悩み苦しんでいるんです。
吃音を克服するには、
- ありのままの自分をさらけ出すこと
- 吃音を好意的に受け入れてくれる環境作り
が必要なんだと教えてくれたのが今回ご紹介する「エビデンスに基づいた吃音支援入門」です。「吃音」に対する捉え方や考え方が変わって力がフーッと抜けてくるのを感じられると思います。
著者である菊池良和先生も吃音者です。
中学1年生のときに「吃音の悩みから解放されるには医師になるしかない」と医学の道を目指すようになったようです。だからこそ、吃音者の本当の気持ちを理解し解決策を示してくれています。
「自分はこうありたい!」という理想を叶えるためにも絶対に必読となる1冊です!
Contents
「エビデンスに基づいた吃音支援入門」を読んでわかること
本書は、
- 吃音とは
- 吃音の歴史
- ライフサイクル上の吃音問題と支援
- 吃音頻度を軽減させる方法
- 吃音のある子の親に伝えたいこと
- 吃音のある人に伝えたいこと
の6章から構成されています。
タイトル通り本の左ページにはエビデンスが載せられています。そして、右ページには分かりやすい解説が書かれています。
とても納得しながら読み進めていくことができるよう構成されています。
この本により吃音を客観的な視点から
- 吃音とは何なのか
- 吃音を軽減させる方法は何なのか
- 吃音者の自分はどう生きていくべきなのか
を理解することができます。では、1つずつ一緒に考えていきましょう!
吃音とは何なのか?なぜ起こってしまうのか?
(引用:吃音検査法小委員会)
上の表は、本書のP13にも記載のある吃音の進展段階の表です。
本人の悩みと逆の動きをしているのが、周囲の心配度です。
自分が、吃音を隠すほど周囲からは「吃音者」というレッテルを貼られずに済むのでこの状態を好んでしまいます。ですが、本人の吃音に対する悩みはドンドンと膨らんでいることが自分自身の経験上もよく理解できると思います。
そして、各章に載せられている6つのコラムのうち非常に参考になるものも1つご紹介します。
(引用:コラム1(P42)引用「ジョンソンの吃音立方体」)
これは臨床家のジョンソン提唱「吃音立方体」です。
体積=吃音の問題
例えば、自分が会社で電話応対をしたときを考えてみましょう。
- 自分がどもってしまったとしても周囲の反応が0(全く気にしていない)の状況であればこの体積は0。
- 反対に、周囲の反応があったとしても本人が気にしなければ0。
つまり、吃音を全く意識しない状況を整えることができれば0となるわけですね。
吃音は、
身体の反応として、脳の動きや喉頭(声帯)の動き
心の反応として予期不安や落ち込み
が原因として引き起る症状です。
吃音は、周囲の反応を気にしすぎることで本人に身体や心の過剰な反応が引き起こされてしまう問題であると理解ができます。
吃音の軽減方法

第4章のP77~P104は吃音軽減方法について、エビデンスに基づいて軽減方法が何通りも載っています。
吃音の障害を一言で言うと「話し始めの内的タイミング障害」P78
と、吃音の本質的な問題の回答もあり、その軽減方法もとても参考になります。
本書での軽減方法として
- メトロノーム法
- 適応効果
- オペラント学習①(正の強化)
- オペラント学習②(タイムアウト)
- 環境調整とリッカルプログラム
- 吃音補助機械(DAF・FAF)
など多くの軽減方法が挙げられており、全て裏付けのある方法です。この中で、社会人である自分が最も効果のあったものとしては適応効果です。
適応効果とは同じ文章を反復して読むと吃音頻度が徐々に軽減することである(P84引用)
これは、即実践可能で効果が絶大な方法です。
社会人となると
- プレゼン
- 研修講師
- 目上の方への説明
などなど、吃音を意識してしまう機会が多く存在します。
そんなときに「また、どもる。。」と悲観するのではなく、「もうやるしかない!」と何十回、何百回とどんなふうに話すか練習をする。
そして、実際に同期や心を許せる先輩に聞いてもらって自信を付けるというのが非常に効果的です。
どもってしまうなら、他の人より話す努力をすれば自信に変わっていきます。
吃音への捉え方が分かる

-
完璧な人間なんていない。
-
吃音がなくても、みんな何らかの悩みを抱えて生きている。
-
吃音のある人は自分で全て解決しようとする。
(P129)
吃音での問題を重く考えすぎていないでしょうか?
たまたま今「吃音」について意識をしてしまっていますが、周りの人たちも他の何かで悩みを抱えています。
そんなときに「なんでそんなこと気にしてんの?」と思ったりせずその人の悩みに寄り添って一緒に考えてあげることが大事なんだと思います。
そしてもう一つ。自分の行動を見直す文章がありました。
吃音を隠すための行動は、聞き手側に否定的な反応を与えることが多い。(P130)
会社でも、友人との間でも「あっこのコトバ言いづらいな。話すのやめとこう」と思うより、とりあえず明るく話しかける。
そうやって、周囲との環境を良くしていこうと前向きな意識が大切であるという当たり前のことに気づくことができます。
吃音を知るなら、まずはこの1冊から!
吃音を克服していくには、吃音に対する正しい知識と考え方が何より大切です。
そして、トレーニング!
上手に吃音と付き合いながら、今後の道筋がハッキリと見えてきます。
ぜひ一読してみてください。